京都新祝祭管弦楽団第11回定期演奏会~北村源三先生への感謝を込めて~


  2026年8月11日(祝・火)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

湯浅篤史指揮/京都新祝祭管弦楽団
早坂宏明、上田じん、福田裕司(トランペット)

十河陽一/「鏡凪」~3人のトランペットを伴うオーケストラのための~(2026年改訂版)
マーラー/交響曲第9番

座席:全席自由


京都新祝祭管弦楽団の演奏会に初めて行きました。京都新祝祭管弦楽団は、2012年に創設されたプロアマ混成オーケストラです。ホームページにも「京都から、新しい「共奏」のかたち」が掲げられていて、「立場を超えて、みんなで共に音楽をつくることを理想に、新しいオーケストラのかたちを実現します」とのこと。
プロアマ混成のオーケストラは日本では珍しく、京都市交響楽団からは、杉江洋子(客演首席第1ヴァイオリン奏者、ゲストコンサートマスター)、金本洋子(客演首席ヴィオラ奏者)、丸山緑(客演副首席ヴィオラ奏者)、西口勝(首席コントラバス奏者)、水無瀬一成(客演首席ホルン奏者)が出演しました。杉江洋子は京都市交響楽団では副首席第2ヴァイオリン奏者ですが、コンサートマスターの古川葵が休団中のため、2026年度はゲストコンサートマスターを務めます。定期演奏会は年に1回開催しています。本公演のチケットは全席自由で3500円(会員割引で3150円)。

音楽監督を務める湯浅篤史(あつし)のプロフィールによると、楽団の創設については複雑な経緯があったようで、2006年に創設された京都祝祭管弦楽団(「新」がない)で湯浅が音楽監督を務めていましたが、2012年に湯浅が音楽監督を辞任し、京都新祝祭管弦楽団の創設に参加し、音楽監督に就任しました。なお、京都新祝祭管弦楽団のInstagram(@kyotonfo)では「改組」と表現しています。湯浅はオーケストラ・アンサンブル金沢でトロンボーンの常任客員奏者を経て、名古屋ブラスアンサンブル音楽監督を務め、京都市立堀川音楽高校でも非常勤講師としてトロンボーンを指導しています。

本公演は「北村源三先生への感謝を込めて」の副題がつけられました。北村源三は京都市出身で、京都市立上京中学校、京都市立堀川音楽高校音楽課程、東京藝術大学を経て、1960年から25年間に渡ってNHK交響楽団首席トランペット奏者を務めましたが、2025年12月30日に88歳で亡くなりました。1993年にNHK交響楽団を定年退職し、京都新祝祭管弦楽団では芸術顧問を務めました。佐渡裕もInstagram(@yutakasado_official)で、「僕が今、毎年のように堀川高校で後輩たちにボランティアで授業をするのも、源三さんの影響がとても大きいです。」とコメントしています。

京都新祝祭管弦楽団のX(@KyotoNFO)によると、7月12日に初回練習、8月1日と2日に初めての全体リハーサル、8月8日と9日に最終リハーサルが行なわれました。
ホワイエに北村源三の歩みをたどる写真パネルが展示されました。湯浅と親交が深かったことが分かります。サイン色紙や北村が掲載された雑誌も展示されました。プログラムにも北村の年譜が掲載されました。

開演前に湯浅がプレトーク。メガネはかけていません。本公演について「北村先生をしのんだり追悼するのではなく、足跡を讃えて感謝する演奏会にしたい」と語りました。ポディウム席には客入れせず、4割くらいの入り。

プログラム1曲目は、十河陽一作曲/「鏡凪」(かがみなぎ)~3人のトランペットを伴うオーケストラのための~(2026年改訂版)。京都新祝祭管弦楽団が十河陽一(とがわよういち)に委嘱した「「鏡凪」~独奏トランペットを伴うオーケストラのための~」が、第5回東日本復興支援特別演奏会(2019.2.10 京都府長岡京記念文化会館)で初演されました(楽団初の委嘱作品)。このときトランペット独奏を務めたのが、北村源三でした。初演の翌月に、プラハのスメタナホール(初の海外公演)でも演奏されました。それ以来の7年ぶりの再演となりました。プレトークで湯浅は「この作品があってよかった。北村先生ゆかりの3人の独奏で演奏する」と話しました。指揮台とコンサートマスターの間に3人が並びました。左から、福田裕司、早坂宏明、上田じんの順。福田は兵庫県立西宮高等学校音楽科特別非常勤講師で、京都新祝祭管弦楽団では役員および首席奏者兼コーチングスタッフを務めています。早坂は元京都市交響楽団トランペット奏者で、今年度から京都新祝祭管弦楽団芸術顧問に就任しました。上田は名古屋音楽大学教授やシエナ・ウインド・オーケストラ団員を務めています。独奏の3人は譜面台つきで、イスに座って、演奏するときだけ立って演奏しました。湯浅は指揮棒なしで指揮。
第1楽章「玄(げん)」は、鉄琴、トライアングル、ウィンドチャイムから始まり、涼しげでさわやかな清涼感があります。オーケストラが盛り上がって不協和音。独奏のトランペット3人が立ち上がって順番に演奏。3人の中では福田の音色が明るくていい音色です。第2楽章「銀朱(ぎんしゅ)」は短い楽章で、ソロを演奏したのは早坂のみでした。第3楽章「天色(あまいろ)」は楽しげな3拍子から始まり、ラストは3人が立って演奏。演奏レベルは期待以上でした。カーテンコールでは作曲者の十河が客席からステージに登場しました。

休憩後のプログラム2曲目は、マーラー作曲/交響曲第9番。技術的な問題は感じませんが、響きに厚みが欲しい。また、弦楽器は細かな音符でモゴモゴするので、アーティキュレーションをはっきり聴かせて欲しいです。トランペット×5に、福田、上田、早坂が引き続き出演したため、トランペットが強力で、トランペットが加わるとアンサンブルが引き締まりました。ホルン×4は安定した演奏。湯浅は指揮棒なしで指揮しましたが、弱奏でも振りが大きい。
第1楽章はやや速めのテンポ。冒頭はチェロとホルンの対話をはっきり意識させました。129小節からのチェロの高音の音程が悪い(スコアではハ音記号で書かれている)。337小節からの3 tiefe Glochen(低音の鐘×3)は、チューブラーベルを使用。377小節からのフルートソロ(客演首席奏者の大谷加奈)がすばらしい。最後はフルートをぶったぎるように終わってしまって、本番ではうまくいかなかったみたいですね。第2楽章は90小節(Poco piu mosso subito)からは速いテンポ。弦楽器のアンサンブルが美しい。第3楽章は、雰囲気を変えて、もう少しエッジを立てて演奏して欲しい。また、もっと前向きな推進力が欲しいです。497小節のオーボエの下降グリッサンドをしっかり聴かせました。終盤はもう少しテンポアップして欲しいですが、技術的な問題でしょう。終盤の647小節と650小節のffは打楽器をもっと鳴らして欲しい。第4楽章はやや速めのテンポ。弦楽器のアンサンブルが豊かな響きで、なんていい曲なんだと再認識しました。図らずも、北村への送別曲のように聴こえました。湯浅の指揮がテンポを揺らすことが少ないためか、やや一本調子で意外にあっさりで、もう少しドラマチックに聴かせて欲しいです。ラストは弱音で締めくくって頑張りました。

湯浅がMC。「とっておきのアンコール」ということで、指揮台の後ろに北村の写真が登場。「北村先生はいつも一番いいところを持っていかれた」と振り返り、「2019年の「鏡凪」の初演のアンコールで演奏したカッチーニのアヴェ・マリアを演奏する」と話して、「先生、どうぞ」と言って湯浅が舞台袖に引っ込んだので、どうなるかと思ったら拍手の録音が流れて、北村が独奏したカッチーニ作曲/アヴェ・マリアの録音が流れました。遅いテンポですが、北村源三のトランペットソロは力強さを感じる音色です。これまでに何回か聴いたことがある曲でしたが、こんなにいい曲だったとは気がつきませんでした。湯浅は「しんみり終わりたくない」と話しましたが、しんみりしてしまう曲ですね。なお、ホワイエで販売された北村のCD「Con Spirito」(2011年)にも、エルンスト・ヴァリー(パイプオルガン)の伴奏で収録されています。録音の再生が終わると、ステージの団員も客席と一緒に拍手。最後は全員で一礼。16:25に終演。

京都新祝祭管弦楽団はアマチュアオーケストラとして聴くとかなり高いレベルですが、プロとして聴くとあと一歩というところです。プロとアマの混成による化学反応に期待します。

北村源三の歩みをたどるパネル展示 北村源三 サイン色紙

 

(2026.8.17記)


石田泰尚&上原彩子 デュオ・リサイタル マーラー交響曲第5番(全曲)アコーディオン独奏