アクリエひめじ開館1周年記念イベント「Arcreaみらいラボ」
記念フォーラム「みんなでつくる、まちとつながる、未来のひめじ」


   

    2022年9月4日(日)14:00開演
アクリエひめじ大ホール

第1部 アクリエひめじ魅力紹介
〔出演〕大河内涼子(ヴァイオリニスト)
    土田昌平(日建設計プロジェクトアーキテクト)

第2部 パネルディスカッション
[パネリスト]清元秀泰(姫路市長)
       吉田正樹(ワタナベエンターテインメント代表取締役会長)
       名倉潤(タレント)
       林千晶(ロフトワーク共同創業者)
[司会〕松本麻衣子(MBSアナウンサー)

座席:全席自由


2021年9月に開館したアクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)で、開館1周年記念イベント「Arcrea(アクリエ)みらいラボ」が9月1日(木)から9月4日(日)まで開催されました。

アクリエひめじは、2021年9月1日に開館しました。総事業費は約400億円。愛称の「アクリエひめじ」は公募で選ばれ、架け橋(アーク)と創造(クリエーション)から、未来へ続く新しい創造の架け橋となる場所にとの思いが込められています。神戸新聞の記事によると、稼働率は5割を超えていますが、入館者数は約313,000人で目標の約4割のようです。もろにコロナ禍の影響を受けている中で、健闘しているのではないかと思います。

2011年7月10日(土)に「アクリエひめじ完成記念式典」が開催され、演歌歌手で姫路市出身の丘みどりからのビデオメッセージ、ピアニストの仲道郁代の演奏、作曲家の池辺晋一郎が指揮する「交響詩ひめじ」が演奏されました。聴きに行きたかったのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で参加対象が姫路市民に限定されてしまったため断念しました。9月1日に行われたこけら落とし公演は、野村萬斎×杉本博司「神秘域」でした。

開館1周年記念の主なイベントは、「FM802弾き語り部-姫路特別公演-」(9月3日(土)16:00〜、大ホール、有料)、「だれでも参加できる「オーケストラひめじ」」(9月3日(土)15:00~16:00、屋外ステージ、無料)、「ゴルゴ松本の「命の授業」」(9月3日(土)13:30〜15:00、中ホール、定員600人、無料)、「記念フォーラム「みんなでつくる、まちとつながる、未来のひめじ」」(9月4日(日)14:00~16:00、大ホール、定員1800人、無料)などでした。

7月25日(月)までに申し込みが必要で、アクリエひめじの応募フォームから申し込み。「ゴルゴ松本の「命の授業」」は落選しましたが、「記念フォーラム「みんなでつくる、まちとつながる、未来のひめじ」」には当選して、イベント参加のご案内(兼入場券)のハガキが届きました。記念フォーラムは定員に達しなかったようで、8月12日まで観覧者の追加募集を受け付けていました。
この日の兵庫県の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は5795人。1週間前から3割減りました。ようやく第7波も収束が見えてきたようです。

JR姫路駅から歩行者デッキを通って、徒歩約10分。もともとはJR貨物の姫路貨物駅があった場所で、姫路駅から東側のやや奥まったところにあります。アクリエひめじに通じる歩行者デッキは屋根がついているので快適で、途中からは2階から地上に降りて、JR播但線の高架下を通ります。建物は、地上5階、地下1階。大ホール(2,010席)、中ホール(693席)、小ホール(164席)のすべてに、「多目的鑑賞室」が設置されているのも珍しい。カラー印刷のきれいな「ガイド」の冊子が館内の各所に設置されて、開館1周年記念イベントへの意気込みを感じました。

歩行者デッキ JR播但線の高架下 「Arcrea HIMEJI」のモニュメント 「Arcrea HIMEJI」のモニュメント メインエントランス 館内案内図


記念フォーラム「みんなでつくる、まちとつながる、未来のひめじ」 大ホール 14:00~16:10

大ホールは2階にあります。ホワイエが広い。客席は黒色で落ち着いた雰囲気で、壁面は黄色のレンガ調です。客席数は2,010席。つい先週の8月27日(土)と28日(日)は、ここで第72回関西吹奏楽コンクール中学校A部門と高等学校A部門が開催されました。5割ほどの入り。場内アナウンスが流れるときは、わざわざ手話通訳者がステージ上に登場します。一歩進んだバリアフリーです。開演前のベルが、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールと同じでしたが、同じ企業(日建設計)が手掛けているからでしょうか。

司会の松本麻衣子が登場。MBSアナウンサーで、姫路市出身とのこと。司会の隣にも手話通訳者が立って、途中で交代するという手厚いサポートがありました。
姫路市長の清元秀泰が、開会のあいさつ。ウィーン・フィルの来日公演に触れて、「音響がすばらしいと言ってくれて、舞台裏にウィーンフィルのステッカーを貼ってくれた」とうれしそうに話しました。構想に10年かかったようです。現在はウクライナからの避難民を受け入れていて、夜は青と黄色にライトアップしているとのこと。

第1部「アクリエひめじ魅力紹介」がスタート。趣旨は「プロアーティストによる演奏とアクリエひめじ設計担当者による解説を通じて大ホールの音響を体感していただきます」とのこと。当初はヴァイオリニストの中澤万紀子が出演する予定でしたが、都合により8月25日に大河内涼子への変更が発表されました。会場内では「体調不良で、中澤から推薦があった」と説明されました。中澤は姫路市出身で、「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」の元メンバー。ひめじ観光大使を務めていて、まさに適役でしたが残念。代役の出演となった大河内涼子も「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」の元メンバーで、本人のブログによると、今年の24時間テレビにYOSHIKIのサポートでヴァイオリンソロを演奏したとのこと。

大河内涼子が赤のドレスで登場。腕が細い。エルガー作曲/愛の挨拶をステージ中央で演奏。ピアノ伴奏なしで、ヴァイオリンだけで聴く機会はないので珍しい。ヴァイオリン1本でもよく響きます。演奏後にマイクでトーク。ここで演奏したのは初めてとのことですが、「包みこまれるような響きで気持ちよかった」「柔らかくてあたたかみがある」と感想を語りました。
続いて、設計者の土田昌平(日建設計プロジェクトアーキテクト)が登場。姫路市出身とのこと。2人で立ったまま話しました。設計に4年半かかったが、「壁面のレンガは実際のレンガで、厚さは8ミリあって重たい。姫路城の石垣をモチーフにした。凹凸をつけている。中ホールと小ホールもレンガとのこと。左右のひさしも特殊コンクリートで、反射面を活用して音響をシミュレーションした」と紹介しました。2階席と3階席の客席の形状は、姫路市の市章をイメージして、Rを描いているとのこと。
続いて、ステージにいる場所で客席での響き方がどう変わるかを体感する目的で、大河内がドヴォルザーク作曲/ユモレスクをステージの左から右に歩きながら演奏。自分の客席から離れた場所で弾いているほうが残響がよく響きましたが、大河内は「どこで弾いても同じような響きがした」と話しました。
土田は、「普通のホールと違う点は照明で、天井のライトがランダムに配置されている点で、「星空天井」と呼んでいる。ある日の姫路をイメージして、色と大きさが違う9種類のライトを配置している。メインライトは北斗七星や大三角が浮かび上がるように配置されている」とのこと。実際に照明を落としましたが、こういう機会ではないと見られません。最後に、大河内が星に願いをを照明を落として演奏しました。

緞帳が下りてきて、司会の松本が大ホールの緞帳を紹介。大ホールの緞帳は、姫路市出身の世界的デザイナーの高田賢三がデザイン。残念ながら高田は新型コロナウイルス感染症の影響で2020年10月に81歳で亡くなりました。大ホールのデザインは「Sunrise」。第1部は30分で終了しました。

休憩後の第2部は、パネルディスカッション。趣旨は「まちの新たな価値を生み出すモノ・ひとづくりとその魅力の発信について考えます」。左から、司会の松本、清元姫路市長、名倉潤(ネプチューン)、吉田正樹、林千晶が登壇。名倉も吉田も姫路市出身。吉田は元フジテレビで、名倉とは長い付き合いで、姫路市観光戦略推進会議委員を務めています。第2部も手話通訳つきでした。

松本が進行しましたが、市長はボケ役、名倉がツッコミ役、吉田がオチをつけてまとめるというような役割分担でした。第1章「パネリストにとっての姫路のまち」では、姫路市長と名倉は山間部で生まれたとのことですが、名倉は「姫路出身が自慢だ」と堂々と宣言。吉田は姫路にテレビ局はないが、ネットの時代における発信力の重要性を指摘。市長は「世界遺産(=姫路城)を駅から見れる町は世界にない」と語りました。第2章「地域創成」では、林が手掛ける「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」を紹介。「輸入木材が入ってきて、日本の森が放置されている」と日本の森の状況をスライドで紹介。「木で作った猫の家が100万円でオンラインショッピングで売れたりする。日本だけがターゲットではない」と語り、姫路への提案として「林業を例にとっても昔はできなかったことが、今ならできることがたくさんあるのでチャレンジしてほしい。外の人を受け入れる力を加える。今までのルールを気にしない人材の活用」を提言しました。
第3章「アンケート」では、ホームページで受け付けたアンケートの回答(192件)をもとにトーク。「姫路は好き」の回答が多く、「魅力は何ですか?」の質問には「歴史・文化財」が圧倒的に多い。 第4章「みんなでつくる まちとつながる 未来のひめじ」では、名倉が姫路への熱い思いを披露。 「若い人のやりたいことを活用する」というまとめになりそうだったところを、「ずっと住んでる人の思いを発表する場を作る」ことの重要性を訴えて、客席から拍手。名倉が姫路の未来についてよく考えていて感心させられました。テレビで見ているだけでは分かりませんでした。恐れ入りました。市長は「アクリエ「みらいラボ」と名付けたように、失敗してもいい場所になるといい」とまとめました。16:10に終了しました。その後の規制退場がうまくいかず、お客さんが一斉に立ち上がってしまいました。アナウンスの音量が小さかったからですね。

大ホール


高田賢三さんデザイン!「緞帳公開」 中ホール

故高田賢三がデザインした緞帳は大ホールと中ホールです。大ホールは上述した通りですが、中ホールは入場無料で事前申込不要でした。中ホールは、大ホールと同じ2階にあります。中ホールのデザインは「Sunset」。

中ホール 中ホール緞帳「Sunset」 高田賢三氏サインパネル


大学生と学ぶ!「姫路カレッジビレッジ」 展示場

1階の展示場で開催されました。姫路市内にある大学が出展。姫路市に大学が4つもあるとは知りませんでした(兵庫県立大学、姫路獨協大学、姫路大学、姫路日ノ本短期大学)。オープンキャンパスのような盛り上がりでしたが、私が参加したのは、姫路獨協大学薬学部の「オリジナルハーブティーの作成、試飲体験!」。好きなハーブをセレクトして、ポットのお湯を注いで、紅茶を飲むという企画でした。

姫路獨協大学薬学部「オリジナルハーブの作成、試飲体験!」


楽しく学ぶ!「キッズラボ」 展示場

こちらは子供向けの企画で、一部は事前申し込みや有料でした。どこもにぎわっていましたが、神姫バスグループ「こども制服を着てバスと記念撮影」で展示された水素バスは新しいと思いました。京都市でも導入して欲しいです。姫路市のイメージキャラクター「しろまるひめ」も巡回していました。
なお、展示場内の「アクリエ紹介コーナー」に、これまでに公演をおこなったアーティストのサイン色紙が飾られていました。2021年11月5日にウィーン・フィルを指揮したリッカルド・ムーティのサインもありました。

楽しく学ぶ!「キッズラボ」 神姫バスの水素バス 姫路市イメージキャラクター「しろまるひめ」


ステージイベント 展示場、屋外展示場

展示場内の「屋内ステージ」と、屋外展示場(にぎわい広場)の「屋外ステージ」で、市民関係者のバンドや楽器の演奏。観覧自由でした。楽しめたのは、兵庫県立大学ダンス同好会「Party Jam Kids」のダンス。なかなかのレベルで、選曲がいい。Kep1er「WA DA DA」、SARM「BONBON GiRL」、モノンクル「アポロ(ポルノグラフィティのカバー)」、VivaOla「Over The Moon(feat. Sagiri Sól)」、ちゃんみな「Never Grow Up」など、楽しめました。

兵庫県立大学ダンス同好会「Party Jam Kids」 屋外展示場(にぎわい広場)


他府県の者が参加しても十分楽しめました。特に1階の「展示場」のようなスペースは魅力的ですね。これだけ有意義に使われていると、宝の持ち腐れ感はまったくありません。もっと参加者が少ないと思っていたので予想以上でした。近畿圏で新しいホールの開設が相次いでいますが、見本になる開館記念イベントでした。

帰路のJR山陽本線の車窓から望む

(2022.9.15記)

京都市交響楽団第670回定期演奏会 第26回京都の秋音楽祭開会記念コンサート