びわこミュージックハーベスト 打楽器&マリンバ 公開アカデミー&演奏会


   
       <公開アカデミー> 2009年8月20日(木)14:00開演
            2009年8月21日(金)10:00開演
            2009年8月22日(土)10:00開演
<演奏会> 2009年8月23日(日)15:00開演
しが県民芸術創造館ホール

びわこミュージックハーベストコーディネーター・講師:宮本妥子
講師:中谷満、神谷百子
ピアニスト:萩原吉樹
受講生:岩元晴香、平光優里、深水鈴音、大依紘子、竹内唯、會田瑞樹、石﨑礼子、久保菜々恵、菅麻美、中野めぐみ、浅川いずみ、奥村夏海

ベック/オーバーチュア
北爪道夫/サイド バイ サイド
ハチャトゥリアン/バレエ組曲「ガイーヌ」より「剣の舞」
パヴァッサー/スカルプチャー イン ウッド
ゴーガー/ゲインズボロ
宮本愛子/デュアリテ
村松崇継/スピリット
カータ/4つのティンパニのための8つの小品より「サエタ」「インプロヴィゼーション」
ヴァーレーズ/イオニゼーション

座席:全席自由


しが県民芸術創造館で4日間に渡って「びわこミュージックハーベスト 打楽器&マリンバ 公開アカデミー&演奏会」が行なわれました。主催は(財)滋賀県文化振興事業団。「びわこミュージックハーベスト」は今年から始まった企画で、滋賀で育ったヴァイオリン奏者の玉井菜採と打楽器奏者の宮本妥子をコーディネーターに迎え、プロを目指す受講生とともに数日間のアカデミーの後、演奏会本番で成果を披露します。第1弾の「室内楽アカデミー」が今年5月に行なわれました。今回の「打楽器&マリンバ」は第2弾です。講師は、宮本妥子と、元大阪フィルハーモニー交響楽団ティンパニ奏者で相愛大学教授の中谷満、マリンバ奏者の神谷百子の3名です。

受講生のオーディションが5月に行なわれました。宮本と中谷が審査員を務めました。募集人数は9名でしたが、最終的な受講生は12名。中学2年生から大学4回生まで幅広い年代が集まりました。大学生のなかには、コンクール入賞歴を持つ人や打楽器アンサンブルを組んで演奏会に出演してる人もいました。近畿圏だけでなく、東京在住の受講生もいました。男女比は女子が11人で男子は1人だけでした。ちなみに、必要経費はオーディション審査料が5,000円+アカデミー受講料が中高生は20,000円、大学生以上は28,000円。宿泊するホテルは各自で手配しているようです。

<公開アカデミー>
3日間のアカデミーは有料で聴講できました。打楽器をどうやって教えるのか興味があったので、「アカデミー通し+演奏会」チケット(3500円)を買って聴きに行きました。
会場のしが県民芸術創造館はJR南草津駅から徒歩10分です。交通の便はあまりよくありません。しが県民芸術創造館の全館を貸し切って行なわれましたが、そのうち聴講できるのはアンサンブルが行なわれる「ホール」、マルチレッスンが行なわれる「リハーサル室」、マリンバレッスンが行なわれる「練習室1」の3ヶ所。マルチレッスンとマリンバレッスンは、講師と受講生のマンツーマンレッスンで、お邪魔するのはさすがに場違いなので、アンサンブルが行なわれるホールに居座って聴講しました。ホールでは、演奏会本番で演奏する5曲の練習と指導が毎日少しずつ行なわれました。ホールの音響がすばらしく、打楽器アンサンブルを演奏するには最高の環境でしょう。
受講生は3日間で「マルチレッスン」「マリンバレッスン」を3回(中高生は2回)受講します。また、自分が参加する「アンサンブル」の練習が毎日あります。「アンサンブル」は全員で演奏する「イオニゼーション」の他に1〜2曲あり、同じ楽器ではなく、違う楽器を担当するようになっていました。ちなみに、講師3名はアンサンブル、マルチレッスン、マリンバレッスンをどこかで指導するタイムスケジュールになっていて休みなしのハードスケジュールでした。ちなみに、楽器はPearl社から無償でレンタルしたとのこと。なかなかすごい。マレットやスティックは受講生の個人持ちのようで、布製のバッグに入れて持ち歩いていました。また、受講生の何人かは、持ち込んだ機材で自分の演奏を録音していました。
アンサンブルは講師が加わって編成されました。講師は自分のパートを演奏しながらアンサンブル全体の指導もするという大変な役回りでした。アンサンブルの練習は、講師によって練習方法は違いますが、後述するように克服する課題はほぼ同じでした。講師もたまには間違えて、受講生に謝っていました。プロでも間違うことがあるようです。なお、講師3名のほかにスタッフが3名ほど来ていました。宮本を「先輩」、中谷を「先生」と呼んでいたので、相愛大学の方でしょうか。
同じ曲を何回も聴くと愛着が出てきます。また、演奏する上でどこが難しいか分かります。各曲の練習については後述しますが、どの曲も日に日にうまくなりました。楽器の配置位置は本番に備えてテープでマーカーしていましたが、楽器位置やマレットなど練習終盤でも頻繁に変えました。
聴講生は私を入れても約5名ほどで予想以上に少ない。3日目の土曜日は増えるかと思いましたが、逆に減って2名だけ。関西吹奏楽コンクールの直前なので、ちょっと時期がよくなかったかもしれません。
練習最終日にはホールスタッフも入ってきてセッティングや照明などの調整。また、ビデオやカメラで練習風景を撮影していました。練習最終日の夕方には「ミーティング」の時間が2時間ほど設けられ、受講生と講師の全員で話し合う時間もありました。非公開だったので内容は不明です。

<演奏会>
座席は全席自由です。客の入りは4割ほどだったので、300名ほどでしょうか。ちょっとお客さんが少なくて残念。アカデミーはホールの右のほうで聴いていましたが、演奏会本番は中央で聴きました。聴く場所が変わると、アンサンブルのバランスが変わることを再認識しました。受講生は黒中心の服装でした。宮本の演出なのか、後述するように照明効果にもこだわっていました。

プログラム1曲目は、ベック作曲/オーバーチュア(打楽器8重奏)。宮本妥子がテナードラムで加わった中高生中心のアンサンブルです。暗い照明のなかメンバーが入場。小太鼓ソロで演奏が始まると同時にステージの照明をつけました。オープニングにふさわしい明るい曲です。拍感があり、ティンパニとチャイムが活躍します。息が合ったハーモニーを聴かせました。
<練習1日目> 宮本が前で聴いて、1回通した後、まずは交通整理。「誰が何してるか把握しましょう」「メロディーは自分が仕切ってるつもりでテンポを作る」「スネアに乗っかる感じ」「自分が前に出て他の方は飾り。メロディーを生かす音色を」「soloと書いてある以外は落とす」「2人で聴きながらメロディーを作る」など。最初から演奏しながら、リズムを確認したり、バランスを調整しました。チャイムに小太鼓奏者を見ながら演奏できるように、目線が低くならないように譜面台を高くしました。「(拍が)表に来るときは前向きに欲しい」「メロディーをちゃんと聴けるように」「グロッケンは楽器のせいもあってちょっと目立っちゃう、もっとおとなしいほうがいい」「しっかり四分音符を感じてください」「連符すべらない、あせらない」「メロディーがどんどん遅くなる」「リズム合ってない、意識して合わせよう」「縦の線はだいぶ合うようになってきたけど、もっと周りの音を聴いてください」「小太鼓がリズムを出す」「この曲はティンパニと小太鼓が指揮者だと思って」「メリハリをはっきりつけたい」など、どんどんうまくなっているのが分かります。最後は宮本妥子も入って全員で演奏。宮本のテナードラムはよく聴こえます。アクセントなどリズムがよく立って、一気に演奏が締まりました。
<練習2日目> 「グロッケンとチャイムはもっとクレシェンドしてくれへん、停滞してるので前向きに」「Rotoトムが遅れてる、スネアに合わせて、シンコペーションくいついていかないと、音量もっと下げて」。シロフォンとRotoトムが合わないので、Rotoトムを演奏する受講生を前に来させて歌わせました。「どうしようかな?」と宮本が困ったときは、受講生が意見を出し合って解決方法を考えていました。「いろいろ問題はあるけど、昨日よりよくなってる」「オーバーチュアとは序曲という意味なので、テンション上げ上げで、さわやかな笑顔で」。スネアのスティックを替えて全員で通し。スネアはスピード感が出ました。
<練習3日目> 「明日本番やからね。気を引き締めて」という注意の後、通し演奏。後輩のスタッフが客席で聴いてバランスをチェックしていました。宮本の要求のレベルが上がってきて「もっと整理してください」。Rotoトムを硬いマレットに変えたり、最後のティンパニのトレモロの終わり方は「顔を下げて「切りますよ」というのが他の演奏者に分かるように」など最終的な調整が行なわれました。「もっと歌いこむ」「音量が中途半端、自分のダイナミックで」「フレーズ感が欲しい」「ffは音量とかじゃなくて気持ち」「今のままでテンション保ったまま」「途中から他の楽器に埋もれる」など技術面よりも表現についての指導が増えてきました。また、「音のイメージがわかない」「どういうイメージ?」と聞いて、受講生が「おおらかな感じ」「堂々とした」と答えていました。また、「どんな人?」「大きい?小さい?」「どんな衣装?」などと質問していました。音楽を人に例えさせるのはうまいなと思いました。「もう少し映像を思い浮かべながら」と話して、曲想のイメージも統一させていました。宮本も加わって演奏。宮本のテナードラムとほぼ同じパートを演奏する小太鼓は、左右に分かれて演奏していてステレオ効果で楽しかったですが、宮本が「ステージでは(小太鼓との)時差を感じる」とのこと。客席ではそんなにずれているようには聴こえませんでしたが、宮本が移動して小太鼓の隣で演奏したところ「こっちのほうが聴こえ方がきれい」ということで、テナードラムとスネアは隣で演奏することが決まりました。楽器の位置が違うと、打点がクリアーに聴こえます。最後に入退場も含めた通し練習。「お辞儀は前の人のタイミングに合わせる」「終わったらすっと帰る」とステージマナーも指導。宮本が「今日思い残すことないようにイメージをチェックしてください」「楽しくやりたい」と話し、受講生全員がひとことずつ抱負を話して解散しました。

1曲目が終わると、暗転。受講生全員でステージの楽器を移動させました。その間を利用して、宮本妥子がステージ横でMC。「生まれ育った滋賀県から発信して、全国の受講生に恩返ししたい」「受講生と3日間一緒にレッスンしました」「私が尊敬する講師の方にご協力いただきました」と話しました。

プログラム2曲目は、北爪道夫作曲/サイド バイ サイド(打楽器ソロ)。最も優れた受講生として「ハーベスト賞」を受賞した武蔵野音楽大学2回生の會田瑞樹が独奏しました。「ハーベスト賞」の発表はアカデミー2日目に宮本から全員に発表されました。アカデミーでの練習を見て、講師3人の満場一致で決めたとのこと。賞金もトロフィーもないとのことですが、演奏会本番にソロで出場できるだけでも名誉なことでしょう。
アカデミーでは披露されなかったので、演奏会で初めて聴きました。立って演奏。周りにいろいろな打楽器が置かれています。右手のスティックでボンゴを一定のリズムを刻むところからスタート。徐々に盛り上がります。途中からは足でドラムペダルを踏んで、バスドラムを鳴らします。叩きながらスティックを持ち替えるなど難曲ですが、すばらしいテクニックで、音色や強弱の変化など表現力もあります。周りの打楽器を使いこなすプロ級の演奏でした。とても1人で演奏しているとは思えません。演奏の始めと終わりに長い間を置くなど堂々とした演奏姿勢もすばらしい。

プログラム3曲目は、ハチャトゥリアン作曲/バレエ組曲「ガイーヌ」より「剣の舞」(打楽器8重奏)。宮本妥子がマリンバの低音パートで加わった中高生中心のアンサンブルです。グロッケン、マリンバ、シロフォン、ビブラフォンが前列に置かれていて、鍵盤楽器が活躍します。シロフォンとマリンバがうまい。スネア、チャイム、シロフォンの音色が整えられていました。ラストはムチの一撃で終わります。聴き慣れた曲ですが、いい編曲です。
<練習1日目> 「ティンパニが主導権を握る感じ」「単純だからこそ誰が出るべきか下げるべきかスコアで研究してください」「スネアとティンパニのバランスは同じくらい。2小節間のソロはもっとレベルつけて」「チャイムと鉄琴は音量じゃなくて気持ちで出てきて欲しい」「余韻が残りすぎてるのが気になる、スタッカート気味に短めに」「調が変わったことを意識して。伴奏も音色を変える、イメージを変える」「鍵盤のスタッカートは軽い音で」「マリンバはmpなんだけど硬めの音」「もっと気持ちを合わせて」「アクセントを合わせるよりもアクセント以外の音をしっかり演奏しないと早くなってしまう」「カウベルはもっと安物のカウベルがいい」「メロディーなので気持ちを入れて丁寧に」「まだ音色がついてきてない、自分が歌いたいようにいい音が出るように研究してください」。また、裏拍のリズムの刻みは、「ンタンタンタ」ではなく、3拍子なので「ンタータータ」と3つで大きく感じるというリズムの感じ方もレクチャーしました。だいぶ音色がそろってきて、「オーバーチュア」よりも短時間でレベルアップしました。最後は宮本もマリンバで加わって通し演奏。宮本のマリンバは身体全体でテンポを感じるような弾き方です。「前向きに軽快に楽しく」「お客さんに音色を楽しんでもらえるように」と話して終了しました。「他の受講生からマレットを借りた場合は一回返してそのつど借りるように」とのこと。打楽器界のルールなのでしょうか。
<練習2日目> 最初に通し練習。昨日よりもすごくよくなりました。スネアが響きすぎるので小さなミュートをつけましたが、まだ響くので「もう少し短めの音がいい」。「中間部は伴奏型を落とす」。また、マリンバを演奏する受講生の身長が低いためか、雛壇を設置。試行錯誤の結果、薄い板の上に乗って演奏することになりました。ビブラフォンとグロッケンを「中に入れる」など楽器の配置角度も微妙に調整。メロディーと伴奏の交通整理がだいぶ進みました。客席で聴いていたスタッフに意見を求めて、「ティンパニを落とす」「クレシェンドもっといやらしく、fからpに落とす」「カウベルはおちゃめなかわいらしさを、アクセントを思い切り」「終盤は鍵盤さん方、もう一段がんばってください」と話しました。
<練習3日目> サウンドがまとまってきて、初日と比べると見違える程よくなりました。宮本からは「みんなのテンションが上がればいい」「すごく涼しげなので情熱的に」「音量じゃなくてエネルギー」と話しました。グロッケンとチャイムのユニゾンは「1分、時間あげる」と話して、受講生同士で相談して考えさせました。また、「オーバーチュア」同様に、宮本が「どういうイメージ?」と質問して、受講生が「王様が休憩している」「紅茶とショートケーキを食べている」と答えて、全員でイメージを統一させていました。最後に入場を含めて通し演奏。客席で聴いていた後輩のスタッフから「完璧です」というOKがでて、終了しました。

プログラム4曲目は、パヴァッサー作曲/スカルプチャー イン ウッド(マリンバ4重奏)。神谷百子がマリンバで加わった大学生のアンサンブル。神谷は一番音程が高いパートを担当しました。この作品が名曲。すごく繊細な音楽で、α波がたくさん出そうです。せつなくなるようなメロディーも美しい。演奏もすばらしく、マリンバがこんなに魅力的な楽器だとは初めて知りました。マレットは片手に1本ずつなので、技術的にはそんなに難しくなさそうですが、表現力が試されます。
神谷のマレットさばきが芸術的。ものすごく軽やかに叩きます。鍵盤を叩いているとは思えないほど柔らかい音です。叩き終わるとマレット2本をそろえて横に流すような動作を見せ、視覚的にも魅せられました。演奏会本番はテンポが少し走ってしまったのが残念。ちなみに、神谷の服装は練習も本番もずっとノースリーブでした。袖がないほうが演奏しやすいのでしょうか。
<練習1日目> マリンバ4台を左から順に高音から並べました。隣り合うマリンバは端を合わせました。神谷も弾きながらまず4人で演奏。しかし、途中で止まってしまったので、神谷が「確実に取っていきましょう」「そんなに早くないから冷静に」と言って最初からやり直し。「低音のマレットは大きめのもの」と言ってマレット変更。「全部sempre ffくらいでいい」と話しました。足を踏み鳴らしてテンポを取りながら演奏。神谷もけっこう間違って「失礼」を連発していました。続いて「1回四角くやります」と言って、マリンバ4台で四角形になるように楽器を移動。神谷は「何をやっているか聴くようにしましょう」「きれいな曲なんだけど、自分のテンポになってしまわないように」と話しました。受講生の3人は基本技術をマスターできています。アンサンブル力を持っていて、体で音楽を感じていました。同じ楽器のアンサンブルなので、神谷も指導がしやすいのかもしれません。自分の楽器を叩きながら教えました。バランスも見ながら「もっと出して大丈夫」とか、自分のパートを歌わせて「もうちょっと出ていい」などと話しました。「細かい音符を冷静に」「バランスを聴いて1本の線にして」「ベースは怖がらずに出してきて、わりとえらそうに。響きの土台を作ってください」「音符と休符のでこぼこを見せて」「リタルダンドもう少しつけようか」「テンポの変わり目は二重線になりすぎないようにアタッカで」「もう少しソリスティックに」「もう少し動いたほうが、重たくなるので」「流れないように、縦線を感じながら合わせる」などと指導。テンポの揺れのタイミングも合わせました。
<練習2日目> 1回目の演奏で「最後まで通った!」と大喜び。だいぶ音符が見えてきました。楽器位置を再度調整したり、マレットを交換したり、客席で聴いて「ちょっと出しめで大丈夫」とバランスもチェック。その後は音符単位で細かく指導。「弱気になりすぎないで」「突っ込みすぎない」「おおげさにクレシェンド、最初もうちょっと小さく」「もう少しスムーズに、勢いをつけすぎない」「ちょっと急ぐかな」「ちょっとうるさいかな、メロディーがのってきたらちょっとその下になってもらって」「ソロもっとえらそうに」「繊細に歌いだして後から自由に」「流れすぎないように小節の頭にアクセント」「合ってるので自信を持って」「自分の世界に入らない」など。アンサンブルが複雑に絡み合う部分はゆっくりテンポを落として練習しました。2日間でものすごくよくなりました。ちなみに、2日目からは神谷は受講生の名前を下の名前で「○○ちゃん」と呼びました。
<練習3日目> 主に演奏の流れや表情の切り替えの確認。「冷静にやりつつつなぐ」「ベースが一番えらいみたいに潔く」「ベースは四分音符を長めにしっかり」。部分的に取り出して反復練習しました。ホールでの練習後も別室に移動して練習したようです。

再び宮本のMC。「剣の舞」を選曲した理由は、「最年少の受講生がオーディションで「剣の舞がしたいです」と話したので選曲した」と説明しました。神谷も登場して2人で対談。宮本は神谷について「素敵」「大好き」と紹介しました。神谷は受講生の演奏について「パワーがあって圧倒される」と話しました。

プログラム5曲目は、ゴーガー作曲/ゲインズボロ(打楽器6重奏)。中谷満がティンパニで加わった大学生のアンサンブル。3つの楽章からなります。楽器の持ち替えが多く、移動もめまぐるしい。すばやく次の楽器に移動します。前列の左右にマリンバ2台が対面して置かれています。このマリンバ2人の息がよく合っています。正面に置かれたビブラフォン、グロッケンと合わせて、4つの鍵盤楽器を3人で演奏します。スコアでは5重奏で書かれているようですが、後述するように練習2日目から6重奏で演奏しました。
本番の演奏が一番よかった。第2楽章は景色が見えてくるほどでした。ビブラフォンの長いソロがあります。第3楽章はマリンバ2重奏がリズミカルで楽しい。後半から超テンポアップ。中谷のティンパニのテンションやスピード感に受講生がよくついてきて白熱したアンサンブルになりました。
<練習1日目> 演奏中に移動できるか楽器位置について議論。5人のメンバーを見て「なんかさみしいな、いつもは6人でやってる」と話しました。「気持ちを安定させるため」という理由で、静かな第2楽章から練習開始。中谷もティンパニを演奏しましたが、よく分からないということで「ちょっと前行く」と言って前で指揮しながら練習しました。中谷は気になることがあればすぐに演奏を止めて修正しました。細かなズレでも止めて繰り返し練習します。「ちょっと早い」「そこaccel.あるんやけど、今日はインテンポで」と話し、まずは一定のテンポで縦線を合わせることからはじめました。たまに手を叩いてテンポを出しました。「ブレスの位置が違う」「四分音符、八分音符、十六分音符をお互いによく聴く。自分のテンポでやると、テンポがかみ合わなくなる」「マリンバもっとしなやかに」「スコア持ってる? ちょっと景色が見えない。周囲の状況が違うので、相手の音が聴こえるようにがんばらないと」と話しました。ここで、楽器を置いて、自分のパートを歌って練習。タイミングやテンポの取り方を合わせるが目的ですが、楽器を演奏するよりも歌うほうが効果的でした。「次のテンポを想像する」「この1拍目を確認して入らないと。ここがアンサンブルのおもしろさ」「相手の呼吸を引き出す」「エスプレッシーボで」「そこはいつも字余りになる」「そこは次のテンポを与える、自分の好きなテンポではダメ」「誰がテンポの主導権あるか」「ソロはすぐ出ない」「自分でテンポを発信して、2人3脚になるように」「合わせようとしてズレた、いい傾向」と話しました。また、「棒立ち。いろんなものを使って発信しないと」と演奏する姿勢も話しました。ちなみに、受講生の呼び方は、「おまえ」と呼んだり、苗字を呼び捨てにしたり、なかなか豪快です。時間がないということで、第2楽章は途中で終わって、「1やろう」と言って第1楽章へ。「テンポのミスをこわがらないで」。冒頭のマリンバは「もっと元気よく」。シンバルが入るタイミングがなかなか合わなくて「旋律を聴いて入らないと」と話しましたが、まだ合わないので受講生が前に出てきて中谷の隣でタイミングを合わせました。しかし楽器を演奏すると合わなくなってしまうので「そんなところで間違ったら先行かへん」と少しご立腹気味。「オレがやろう」と言って、中谷がシンバルを演奏。シンバルが変わると、他の楽器もイキイキ演奏しました。中間部のマリンバ2重奏はいいハーモニーです。残った時間で第3楽章。中谷は指揮しながら自分のパートを歌いました。「ラレンタンドは流れが悪い」。また、シンバルは「1人きついな」と話しました。右手でシンバルを叩きながら、左手で大太鼓を叩く部分があり、「せわしない」「ばたついて見失う、楽にしたい」と話しました。スタッフに「やるか?」と聞いて増員する意向を示しました。また、演奏の出来に危機感を持ったのか、明日の夜に補習で練習することを予告しました。
<練習2日目> サポートメンバーが1名が加わって、中谷もティンパニを演奏しながら6名で練習。演奏時間が長いので、どこかの楽章をカットするという話が出ているようですが「カットいややろ」と言ってカットせずに、第1楽章から練習開始。「カウントで入らない、フレーズで入る」「支配されながら1つの方向に向かう」「自分のところではしゃげばいい」「主張しながらバランス取る」と話しました。「テンポが早くなってるけどもういい。ティンパニは直接的に関係ない」と言って笑わせました。「気になったところをリクエスト」「やっておきたいところを自己申告」「不安なところは?」と受講生に聞きました。第2楽章は「みんなで見つめあってやさしさが欲しい」「意図がつながらない」「4拍目から(次の)1(拍目)に行くときは呼吸が欲しい」「第2楽章はドルチェ感のサウンドにしよう」と話しました。また、ビブラフォンソロは後ろのティンパニやシンバルにアイコンタクトを送ってタイミングを合わせていましたが、中谷が「合図を出さないで、わがままに付き合う、見なくていい」と話しました。第3楽章は1回通した後、テンポアップしてもう1回。「電子信号のような音楽になってる、ワルツだよ」「接続詞のところ、ジョイントのところが合ってない。夜やる」「音量とバランスは明日」。だいぶサウンドがまとまってきました。全体の練習が終わった後、夜8時から9時まで練習したようです。
<練習3日目> 格段によくなって、さらにサウンドがまとまってきました。昨日の夜練の効果でしょうか。第1楽章はものすごくよくなりました。「あんまりいじくると本番難しくなるから、それ以上いらわんとこ」「積極的に行こう、少しくらいのズレは分からない」と話しました。客席で聴いていたスタッフからも「大丈夫です」の声が飛びました。第2楽章は鍵盤のバランスを調整。ビブラフォンは余韻の使い方がすばらしい。客席のスタッフが「マレットで叩くサッシン(サスペンド・シンバル)の発音が聴こえなくて意味がない」と意見。第3楽章はマリンバ2台がよく響きます。中谷のティンパニも本気になって叩きました。マレットを硬くしたのか勢いが出てきました。演奏後に中谷が「すばらしい!」と絶賛。大太鼓の手首の使い方を指導しました。最後に通し練習。受講生が録音しましたが、中谷がミス。録音するとミスが起こるというジンクスがあるようです。

休憩後の?部はまず講師のソロ。ステージ左から、宮本の打楽器、中谷のティンパニ、神谷のマリンバが置かれました。いずれもアカデミーでは披露されなかったので演奏会で初めて聴きました。ソロステージということで、わざわざ衣装を変えて登場しました。
プログラム6曲目は、宮本妥子の打楽器ソロで、宮本愛子作曲/デュアリテ。照明は暗くスポットライトのみ。宮本は衣装の胸の辺りに銀色のキラキラ光るデコレーションをつけていました。ゆっくり静かにスタート。手や腕の動かし方や腰を使ったり、上半身でも表情を作って視覚的に見せます。後半は盛り上がって、女性とは思えないほどの力強さ。連打では何発叩いたのか分からないほど目にもとまらない速さ。しかも正確です。客席からも「かっこいい」という声が漏れました。2曲目の「北爪道夫作曲/サイド バイ サイド」と似たような曲でしたが、プロは音色が違います。足で鳴らすバスドラムも硬い音でした。曲が終わると同時に、スポットライトが消えました。

プログラム7曲目は、神谷百子のマリンバソロで、村松崇継作曲/スピリット。赤色のドレスで登場。礼をして4本のマレットを手に持つとすぐに演奏開始。高音から低音までマリンバをフルに使う作品で、左右に激しく移動しました。中盤からは美しいメロディーが現れます。村松崇継は映画「誰も守ってくれない」の主題歌「あなたがいるから YOU WERE THERE」を作曲していますが、この作品もメロディーが美しい。名曲です。神谷は没頭して、たまにかなきり声のような声が聴こえました。まだCDでも発売されていないようですが、ぜひもう1回聴きたいですね。

プログラム8曲目は、中谷満のティンパニソロで、カータ作曲/4つのティンパニのための8つの小品より「サエタ」「インプロヴィゼーション」。作品名が示すように、4つのティンパニを叩きます。中谷は立ったまま演奏。1曲目「サエタ」は落ち着いたテンポですが、右手で一番左のティンパニを叩くなどアクションも楽しめます。途中でマレットからスティックに持ち替えて演奏。チューニングして2曲目「インプロヴィゼーション」は、ティンパニをスネアのように連打が続きます。強打のアクションがすごい。

宮本のMC。「打楽器の演奏会に初めて来られた方はいますか?」と客席に聞くと、けっこう多く手が上がったので「ありがとうございます。こんなに豪華な演奏会はないです。すごいことなんです」と今回の演奏会企画を自画自賛していました。宮本が「大が何個もつく巨匠、中谷先生」と紹介して、中谷が登場。中谷は「朝9時から夜9時まで12時間体制で有意義な時間でした」と感想を話しました。

プログラム9曲目は、ヴァーレーズ作曲/イオニゼーション(打楽器15重奏)。中谷が指揮。受講生12名全員と宮本と神谷、それにピアニストの萩原吉樹が加わった大編成での演奏です。打楽器13重奏として作曲されていますが、パートを2人で分けるなどして15人で演奏しました。ステージには大量の楽器が置かれました。中谷が作品解説。「打楽器アンサンブルはこの曲が起点となった。すごくシンプル。統制されていて、決してむちゃくちゃでない」と話しました。
中谷は指揮棒なしで指揮しました。一人でいくつもの楽器を持ち替えて演奏します。音程はなく、リズムと強弱の音楽です。騒音のようなものすごい音楽で、リズムが難しいですが、よく整理されていました。演スピード感がよく揃っていてすばらしい視覚的に楽しめるのもいいです。サイレン2台やギロやムチなどの小物がよく見えました。ウッドブロックの音色も楽しい。Lions roar(ライオンズローア)という楽器も初めて見ました。太鼓に付けられた紐を、体重をかけて下に引っ張ることによって音を出します。
<練習2日目> 練習1日目は非公開だったので、2日目に初めて聴きました。初めて聴いたときは、「何これ?」と思いました。ごちゃごちゃしていて、譜面どおり演奏できているのかよく分かりませんでした。スコアには「○番」というように、楽器名ではなくパートは番号で書いてあるようで、中谷も番号で呼んでいました。3番は大太鼓を両刀使いで正面の小太鼓も叩くという忙しさです。2人ずつくらいで部分的に取り出して合わせていきました。中谷は飛んだり跳ねたりダイナミックな指揮。「目で見えないけど耳で見る」「f(ワンフォルテ)の人は少し落として」「サイレンの目的地が1拍目」「スポットライトを感じてもらえるように楽しく」。5連符を2+3で取るか、3+2で取るかで議論があったり、中谷が受講生を笑わせるような話題を振りまきながら練習が進みました。練習が進むにつれて、各楽器がつながってきて、だいぶそろってきて音符が見えてきました。京都市交響楽団みんなのコンサート「サウンド・オブ・ドリーム」のため、残念ですが途中で早退しました。
<練習3日目> 演奏の精度が断然上がって、中谷が「すばらしい」とほめました。通し練習を2回して、早めに練習を切り上げました。

演奏会の終演後は、講師と受講生がステージ上で記念撮影をしていました。

とにかく受講生のレベルの高さに驚きました。日本でもトップ水準と言ってよいでしょう。どの曲もCDにしたら売れるレベルです。演奏は3日間でものすごく上達しました。受講生1期生でこのレベルはなかなか将来的に明るいです。
演奏会本番はあっという間でした。また、演奏会本番の演奏がベストとは限りませんでした。演奏会本番は客席で赤ちゃんがわめいてうるさかったので、コンディションとしてもよくありませんでした。その点では、練習風景も見学できて、何回も演奏を聴くことができたのでよかったです。講師のソロステージも1曲だけでしたが楽しめました。
アカデミー聴講生や演奏会のお客さんが少なくて残念でした。せっかくのすばらしい演奏なので、もっといろいろな人に聴いてもらえるように広報したほうがいいと思います。「びわこミュージックハーベスト」は今年から始まったばかりの歴史が浅いイベントなので、必要な改良を加えていけばいいでしょう。

なお、8月に滋賀県行政経営改革委員会が「外郭団体および公の施設の見直しに関する提言」を滋賀県知事に提出しました。そのなかで、滋賀県の厳しい財政状況により、しが県民芸術創造館は「可能な限り早期に廃止するべきである。なお、移管や売却が可能な団体等がある場合は、その検討を行うこと。」と記述されています。音響がいいホールなので、あまりに廃止はもったいない。ぜひ民間企業等が運営を引き継いで欲しいと思います。また、滋賀県文化振興事業団についても「文化系のソフト機能については、(財)びわ湖ホールに統合して効果的な施策展開を図り、団体については、将来的に廃止を含めて検討するべきである。」と記述されています。ホールの運営主体が変わっても、「びわこミュージックハーベスト」の取り組みはぜひ続けて欲しいと思います。来年も期待しています。

(2009.9.11記)


しが県民芸術創造館



京都市交響楽団第527回定期演奏会 京都市交響楽団みんなのコンサート「サウンド・オブ・ドリーム」