マイクロ・オペラ「カルメン」公開オーディション


   
      
2008年8月7日(木)14:30開演
京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ

<スニガ> 落合庸平
<ダンカイロ> 五島真澄
<フラスキータ> 津田祐理子
<ダンカイロ> 西村明浩

審査員 北村晶子(ピアノ・音楽監督)
     松原有奈(ミカエラ/ソプラノ)
     渡邊正治(財団法人京都市音楽芸術文化振興財団音楽アドバイザー)

座席:全席自由


オペラのオーディションが入場無料で見れるということで見に行きました。オペラには詳しくないので、オーディションとはいえ無料で聴けるとは格好の機会です。演目は、ビゼー作曲/カルメン。本番は11月22日(土)に同じ京都コンサートホールアンサンブルホールムラタで行なわれます(もちろん有料)。「マイクロ・オペラ」というタイトルが示すように、最小限の出演者で、コンパクトな形態で行なわれるようです。アンサンブルホールムラタのステージの広さを考えれば、舞台装置はおそらくなく演奏会形式に近いと思われます。伴奏はオーケストラではなくてピアノのようです。オーディションを本番と同じ場所で行なうなんて贅沢ですね。
今回のオーディションでは、フランスキータ(ソプラノ)1名、スニガ(バス)1名、ダンカイロ(テノール)1名を選びます。対象は、京都市立芸術大学音楽学部生、大学院生、卒業生。公演の主催が京都市なので、京都市立芸大にお声がかかったのでしょうか。4名が出場しました。ピアノ伴奏者は自分で連れてくる必要があります。

集まった聴衆は50名ほど。出演者の関係者というよりは、音楽やオペラが好きそうな年輩の方が多かったです。
審査員が登場。6列目に座りました。左から、北村晶子、松原有奈、渡邊正治の順。本番で、北村はピアノと音楽監督を、松原はミカエラ役を務めます。
アナウンスで出演者名が告げられてオーディションがスタート。課題曲(「カルメン」の一部)と自由曲を続けて演奏しました。
1番は、スニガ役の落合庸平。ピアノ伴奏は高田美甫。高音の伸びがよくきれい。低音はちょっと聞こえにくいです。両手を広げて歌いました。自由曲は、グノー作曲/歌劇「ファウスト」より「門出を前に」。演奏後に、北村晶子がマイクで質問。「レパートリーは」の質問に「イタリアで歌った経験がある」と答えました。また、バリトンでスニガを選んだ理由について質問。「ダンカイロはいかがですか」と聞くと、落合は「声の質が違うと思います」と答えました。
2番は、ダンカイロ役の五島真澄。ピアノ伴奏は、若井亜妃子。演奏が始まってすぐにうまいと分かりました。声が整っている。口から声が出ているのではなくて、体全体が響いている感じ。声量もすごい。自由曲は、ドニゼッティ作曲/歌劇「ファボリータ」より「レオノーラよ、私の愛を受けてくれ」。課題曲とは対照的に、細かな音符が続く曲で選曲も考えられています。また、課題曲は直立不動で歌いましたが、自由曲は手や腕を動かしながら歌いました。ピアノ伴奏の若井の演奏も表情があっていい。演奏後は、北村がレパートリーを聞いた後に、「学内公演か学外公演か」「演出家は誰か」「フランスもののアリアの経験はあるか」など突っ込んで質問しました。
3番は、フラスキータ役の津田祐理子。出演者のうち唯一の女性です。ピアノ伴奏は本山加奈。譜めくり要員1名を同伴しました。課題曲の第2幕「五重唱」は有名なメロディーでした。自由曲は、ウェーバー作曲/歌劇「魔弾の射手」より「りりしい若者が来るときは」。歌唱は音程が不安定。跳躍のなめらかさもいまいち。発音もあまりよく聴こえません。ここぞというときの声量はすごかったです。演奏後、北村は「どうもありがとうございました」と話しただけで、質問はなし。なかなか厳しいですね。
4番は、ダンカイロ役の西村明浩。ピアノ伴奏は、前田亜紀。譜めくり要員1名が同伴。課題曲は五島真澄と同じ曲ですが、歌う人が違うと別の曲のように思えました。五島とは対照的に、声が硬め。ドイツ語的な発音と言えるでしょうか。もう少しやわらかさがほしいです。強唱ではちょっと無理して声を出している感があります。また、身振り手振り(というよりも演技)を多く交えながら歌いました。ヒザを曲げて歌ったり、手を動かしたり。自由曲(ドニゼッティ作曲/歌劇「ピア・デ・トロメイ」より「彼女を失って」)を歌う前に、ネクタイを外したのはどんな意味があったのでしょうか。演奏後の質問は、「レパートリー」「指揮者」「演出家」を聞いた後に、「まだ学生さんとのことですが、稽古は大丈夫でしょうか」と確認していました。

15:10に終演。結果発表は、15:30にホワイエで行なわれるとアナウンスがありました。ホワイエでしばらく待つと。ホワイトボードに紙を貼って結果が発表されました。紙には、<フラスキータ>該当者なし、<スニガ>五島真澄、<ダンカイロ>落合庸平、と書かれていました。落合と五島は逆の役で歌ったので、間違えて発表したのではないかと思いましたが、どうやら合っているようです。オーディションで歌った役ではない役で合格するなんてちょっとびっくり。落合は低音があまり出なかったので、テノールのダンカイロのほうが適役と判断されたのでしょう。あくまで声の質が審査されたということでしょうか。楽器だったら無理ですが、声楽はこういったコンバートができるのである意味便利ですね。出演者も後から掲示を見に来ていました。同じ大学の先輩と後輩の関係なので、仲良く家路につかれました。

短時間ですが、オーディションの現場を見れて勉強になりました。演奏会とは違う独特の緊張感も感じ取れました。オーディションを公開する試みはそれほど多くないと思いますが、無料公開することによって、宣伝効果だけでなく、聴衆も公演の完成過程を知ることができます。固定ファンの獲得にも有効でしょう。機会があればぜひ行きたいです。

(2008.8.9記)


第20回立命館大学ローム記念館コンサート Piano Recital「世界に羽ばたくピアニスト」 京都市交響楽団第516回定期演奏会