読売日本交響楽団第501回名曲シリーズ


   
      
2008年4月12日(土)18:00開演
サントリーホール大ホール

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮/読売日本交響楽団

チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

座席:A席 2階C 7列25番


2007年4月に読売日本交響楽団常任指揮者に就任したスタニスラフ・スクロヴァチェフスキの2年目の最後のシーズンです(※常任指揮者の任期が2010年3月31日まで1年間延長されることが、演奏会後の4月18日に発表されました)。常任指揮者に就任してからこのコンビの演奏を聴くのは今回が初めてです。チケットは全席完売でした。
サントリーホールは、2007年4月から8月末まで改修工事のために休館しましたが、リニューアルオープン後のサントリーホールで聴くのは今回が初めてでした。客席のイスが新調されて、きれいになりました。ステージの天井から吊られている音響施設も新しくなった感じがしましたが、注意深く観察しないと違いはよく分かりませんでした。開演前のアナウンスが英語でも流れました。

プログラム1曲目は、チャイコフスキー作曲/交響曲第6番「悲愴」。「悲愴」を前座に持ってくるプログラムがすごい。随所にスクロヴァチェフスキらしい仕掛けがあって楽しめました。テンポに緩急をつけたり、楽器をクローズアップして強調したりしました。また、静と動をはっきり対比させました。弱奏ではゆっくり丁寧に間を開けて演奏。強奏では勢いをつけて一気に演奏しました。ティンパニはほとんど聴かせませんでした。スクロヴァチェフスキはこの作品にティンパニは必要ないと考えているのでしょうか。スクロヴァチェフスキは、譜面台なしで指揮。腕を大きく動かしてパワフルな指揮を披露。とても84歳の指揮とは思えません。
第1楽章冒頭から低音を効かせて和音をぶつけ、暗い表情を作り出しました。木管楽器も弱音で音量を抑えながら進みましたが、67小節からのUn poco animandoからテンポを急に速め、金管楽器を爆発させました。第2楽章も5拍子であることを意識させないほどよどみなく流れました。82小節、84小節、86小節、88小節では、木管楽器を速く演奏しました。172小節と174小節の第1ヴァイオリンも同様に速く演奏しました。意図は分かりませんが、弦楽器と木管楽器の掛け合いを活性化させたかったのかもしれません。第3楽章229小節からの主旋律は弦楽器主体で、金管楽器は聴かせません。第3楽章が終わると、指揮棒を止めたままそのまま第4楽章へ。147小節からのAndante giustoは、コントラバスを聴かせました。

休憩後のプログラム2曲目は、ストラヴィンスキー作曲/バレエ音楽「春の祭典」。スクロヴァチェフスキがNHK交響楽団を指揮して録音したCD(1992年)を聴いて「予習」していました。スクロヴァチェフスキはこの作品では譜面台に譜面を置いてめくりながら指揮しました。前曲の「悲愴」とは打って変わって動きが少ない指揮で、変拍子を指揮するのに専念しているように見えました。演奏も意外にデフォルメが少なく、余裕を感じさせましたが、やや安全運転でした。えこひいきして強調する楽器はありませんでした。個性的な演奏を予想していたので、期待外れ。もっとおもしろく聴かせてほしいです。トランペットとトロンボーンがひきずるような重い響きを聴かせました。
「長老の行列」に入る練習番号66からファゴットを強調。第1部「大地礼賛」最後の小節で、金管楽器とチェロの最後の音符をフェルマータのように長く伸ばしました。最後の音符は四分音符と八分音符の2種類あるので、音符の長さの違いを示したかったようです。上述のNHK交響楽団とのCDでは聴かれなかった新解釈です。第2部「いけにえの儀式」では、「序曲」の練習番号88付近で木管楽器が拍を間違って吹きました。スクロヴァチェフスキが振り間違えたのかもしれません。ちょうど遅いテンポの部分で、スクロヴァチェフスキも大きく指揮して演奏を立て直すことはしなかったので、オーケストラも何を吹いていいのか分からなくなって、演奏が止まるのではないかとひやひやしました。続く「選ばれた処女への賛美」の練習番号111でも大太鼓が派手に叩き間違えましたが、何とか切り抜けました。練習番号142から始める「神聖な踊りと選ばれた処女」は、かなり速いテンポで演奏。練習番号174からのティンパニ2台による連打は、全然叩かせずにかなり小さい音量で演奏。一瞬間違ったのではないかと思うほど別の音響でした。練習番号190から、NHK交響楽団とのCDでは、弦楽器をピツィカートに変更して演奏しましたが、今回はスコア通りarcoで演奏しました。気が変わったのでしょうか。

スクロヴァチェフスキが常任指揮者に就任して1年が経ち、読売日本交響楽団との意思疎通が図られてきたことを感じました。ただし「悲愴」と「春の祭典」で指揮の姿勢がまったく違うのが気になりました。大きな指揮で積極的にオーケストラをリードした「悲愴」に対して、「春の祭典」ではスコアを見ながら小さな指揮で、オーケストラに流れを任せていました。まるで別人のような指揮振りで、びっくり。また、両曲ともティンパニをほとんど聴かせませんでした。いつから嫌いになったのでしょうか。

(2008.4.24記)


サントリーホール



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