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2007年12月23日(日)14:00開演 東京文化会館小ホール 小林道夫(チェンバロ) J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲 座席:一般 G列19番 |
小林道夫のチェンバロ演奏会に行きました。小林は毎年末にJ.S.バッハ作曲の「ゴルトベルク変奏曲」を演奏していて、今年で36回目になるとのこと。小林道夫にとって「ゴルトベルク変奏曲」はライフワークになっていると言えるでしょう。ちなみに、2002年からクラシックの演奏会を本格的に聴くようになってから、器楽曲(独奏曲)の演奏会を聴くのは今回が初めてです。
チケットは、東京文化会館チケットサービス「セレナーデ」のホームページから購入しました。
東京文化会館には今回初めて行きました。JR上野駅の公園口から歩いてすぐの場所にありました。交通の便は最高ですね。この日は、大ホールで、「第114回 2007「第九」演奏会」(十束尚宏指揮/東京フィルハーモニー交響楽団他)が行なわれるということで、1階のエントランスロビーは大混雑でした。
小ホールにはクロークがありません。かわりに、コインロッカー(100円返却式)がありました。ホールでは、ステージに置かれたチェンバロを調律師が調律していました。小林が演奏するチェンバロは、1987年のアトリエ・フォン・ナーゲル社製とのこと。意外に新しいです。鍵盤は2段式でした。深緑色の外装で、周囲は金色で装飾されていました。
649席の小ホールはほぼ満席でした。私が普段行く演奏会よりも、聴衆の年齢層がやや高めでした。ホールのステージが高くないので、身近に感じます。客席のイスが少し低いです。
開演時間になって、小林道夫が楽譜を持って登場。メガネをかけていました。笑顔で一礼してイスに座りました。しばらく目をつぶった後、演奏をはじめました。
小林道夫は淡々と音符を演奏していました。チェンバロはホールで聴くと、音が小さいですね。オーケストラの演奏会以上に、耳をそばだてるように聴く必要があります。座席が、向かって左側の通路側だったので、小林の指先がよく見えました。両手を交差して演奏する部分があるなど、技術的に難曲ですね。それなりにミスタッチもありました。強い打鍵はなく、弾いている姿も地味です。大切に演奏していましたが、大きな変化に乏しいのが残念。チェンバロにはペダルがありませんが、音量を調整できる装置はあるようです。小林は曲によって装置を使ったり使わなかったりでした。チェンバロの楽器構造はあまり詳しくないので、もっと勉強しなくてはいけませんね。
小林は標準からやや速めのテンポで演奏しました。また、楽譜に書かれた反復記号はすべて実行したので、かなり長く感じました。この作品を初めて聴いた人は、あまりの長さで作品の全体像が見えなくてびっくりしたことでしょう。客席からいびきが聴こえました。この作品は、バッハが不眠症に悩んでいたカイザーリンク伯爵のために作曲したとされているので、作曲の目的は果たされたと言えるでしょうか…。
また、3曲ごとに楽譜をめくって一息つきました。これは、『ぶらあぼ』2008年1月号に掲載されたインタビュー記事で、「変奏曲は3曲ごとに分けることができ、10個のグループとなるのです。1曲目は舞曲のようなもの、2曲目は技術の見せ場のようなもの、そして3曲目がカノン」と語っていることを裏付けるものでしょう。
主題(アリア)は、装飾音やトリルを拍感にとらわれず演奏していました。小林はプログラムに「演奏習慣」と題する文書を寄稿しています。その中で、1984年に入手したフレデリック・ノイマンが著した「演奏習慣についてのエッセイ」という論文集を読んで、装飾音やトリルや演奏様式について「初めて自分の目でバッハの楽譜を読むことの方に勉強の方向を向けることが出来るようになった」と記しています。独自の演奏解釈は、小林の研究の成果の現れでしょう。以降の変奏では拍感があったので、このような弾き方は最初と最後のアリアだけでした。
第15変奏まで弾き終わると、立ち上がって一礼。楽譜を持って退場しました。20分間の休憩中に調律師が調律しました。CDなら全曲が連続で再生されるので、途中で休憩が入るとは意外でした。
第21変奏は、上段の鍵盤にミュート(バフ・ストップ)をかけて、琴のような響きを聴かせました。第30変奏は、装飾音もリズミカルに演奏。主題復帰(最後のアリア)は、作品が終わってしまうさびしさを感じました。
演奏終了後は、拍手に応えてアンコール。小林が曲名を紹介して、J.S.バッハ作曲/平均律クラヴィーア曲集第2巻第7番変ホ長調を演奏。最後は楽譜を持って退場しました。
16:00に終演。小ホールのホワイエで小林道夫のサイン会が行なわれました。小林道夫が11月にリリースしたCD「J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲」を購入した人が大行列を作っていました。
(2007.12.28記)