N響「第9」チャリティーコンサート


   
      
2004年12月27日(月)19:00開演
NHKホール

クシシュトフ・ペンデレツキ指揮/NHK交響楽団
大倉由紀枝(ソプラノ)、永井和子(メゾ・ソプラノ)、市原多朗(テノール)、福島明也(バリトン)
国立音楽大学合唱団

ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱つき」

座席:S席 2階C 2列14番


年末恒例「紅白歌合戦」を目前に控えたNHKホールで、N響「第9」演奏会を聴きました。この日の演奏会はNHK厚生文化事業団主催のチャリティーコンサートとして開催されました。
今年は、ポーランドの作曲家、クシシュトフ・ペンデレツキが指揮をするということでどんな演奏になるのか注目が集まりました。自作でかなり斬新な音響を聴かせるペンデレツキですが、ベートーヴェンはペンデレツキが敬愛する作曲家だということです。チケットは全席完売でした。

NHKホールはJR原宿駅から西に歩くこと約10分で着きましたが、代々木公園の周囲には街灯が少なく暗いので、渋谷駅から歩いたほうが安全かもしれません。いずれにせよ、ホールの立地はよくありません。ホールの中に入ると、まず通路の広さに驚きました。とにかく広い。階段も異常な広さ。喫茶店など館内設備も充実していて、ソファーもたくさん置いてありました。NHKホールは音響がよくないと指摘されますが、客席に座った印象では視覚的にはそんなに悪くありませんでした。

開演に先立って、合唱団が入場。ステージ後方に、女声が前5列、男声が後3列に座りました。奥行きの広いホールじゃないと、こんな配置はできません。続いて、ペンデレツキがゆっくりと登場。とても恰幅があって大きなお腹をしていました。すぐに指揮をはじめました。
演奏について書く前に、やはりホールの音響が悪すぎる。ほとんど響きません。ものすごく遠くで演奏しているように聴こえて、生演奏らしさが感じられませんでした。オーケストラの演奏にも影響を与えているようで、パート内でもまとまっていません。
ペンデレツキは、指揮棒を使わず腕を上下させて指揮していました。拍通り振らないなど分かりやすい指揮ではなく、オーケストラも自信なさげに聴こえましたし、アインザッツに乱れがありました。たまに指揮台の上でジャンプすることがありました。今回の第九では、ペンデレツキならではの斬新でグロテスクな演奏解釈を期待したのですが、個性的な演奏ではなく一般的で、細部のデフォルメなどもありませんでした。表情が細部まで聞き取れるようなホールではありませんでしたが、強烈なメッセージ性のある指揮ではありませんでした。チェロにはこだわりがあるようで、激しいボウイングで演奏させていました。管楽器がさっぱり聴こえませんでしたが、これはホールの問題だけでなく、ペンデレツキが意識的に抑えているように感じました。ただ、強奏でも厚みが出ないので平面的に聴こえましたし、ちゃんと演奏しているのか疑いたくなることもありました。ティンパニも力強さに欠けました。
第3楽章の前に、独唱者4人が入場。指揮者の前のイスに座りました。第3楽章になると、楽器間に有機的なつながりが出てきていくぶん表情が豊かになりました。弦楽器が美しい音色を奏でて落ち着いたたたずまいで進みました。
第4楽章の合唱団は人数が多いだけにそれなりの迫力がありましたが、発音が不鮮明だったのが残念。合唱が加わってからオーケストラも目が覚めたようによく響くようになりました。独唱者、特に男声2人の声はよく響きました。指揮台の近くが、このホールのベストポジションなのかもしれません。ソプラノの大倉由紀枝の高音が少しきつく感じられました。

終演後は大きな拍手が送られていましたが、この演奏内容では、かなり厳しいと思いました。NHKホールの音響は「第九」のような大規模作品の演奏には適さないと思います。NHK交響楽団はNHKホールで定期演奏会を開催していますが、オーケストラの技術向上のためにもホールを変えたほうがいいでしょう。「NHK音楽祭」では、来日オーケストラも演奏していますが、あまりいい演奏が望めそうもありません。このホールで指揮しようという指揮者はある意味すごいです。ただ、視覚的には悪くないので、演奏を聴くよりも演奏者を見たい場合は、いいかもしれません。

クシシュトフ・ペンデレツキの指揮は、上述しましたが、作曲家の立場からの斬新な演奏解釈を期待しましたが期待はずれに終わりました。ブーレーズのように独自の視点で個性的な指揮を聴かせる作曲家ではないようです。

(2004.12.30記)




新日本フィルハーモニー交響楽団第379回定期演奏会「小澤征爾のショスタコーヴィチ」 佐渡裕 21世紀の第九