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2004年1月16日(金)19:00開演 京都コンサートホール大ホール 本名徹次指揮/京都大学交響楽団 芥川也寸志/交響管絃楽のための音楽 座席:S席 1階 23列23番 |
2004年聴き初めです。京都大学交響楽団は、朝比奈隆を輩出した歴史ある学生オーケストラです。京都大学交響楽団に所属していた知人が、なかなかレベルの高い演奏を聴かせるという話をしていたので、一度聴いてみたいと思っていました。それに、今回の演奏会の選曲がすごい。プロのオーケストラでもこんな個性的な作品を並べることは少ないと思います。このプログラムでも客席がほぼ満員だったのは驚きました。おそらく団員の関係者以外も多数来場していたと思います。演奏会に先だって、音楽部部長がご挨拶(というよりご講演)。その後、団員が入場。弦楽器の配置は、左からコントラバス、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの順でした。客演指揮の本名徹次が颯爽と登場。
プログラム1曲目は、芥川也寸志作曲/交響管絃楽のための音楽。この作品はナクソスの「日本作曲家選輯」に収録されていたので、日本人の作品としては比較的知名度は高いと思われます。本名徹二は、フレーズの方向性やアクセントを明確に指示していました。
第1楽章は、各楽器の音色がややリアルで、楽器間のブレンドに乏しいのが残念。金管も音を外すのが目立ちました。ソロも表情付けに乏しくやや一本調子。
第2楽章も迫力があり表情の変化も十分感じられましたが、強奏での音の飛びがいまひとつ。
プログラム2曲目は、メシアン作曲/交響的瞑想「忘れられし捧げもの」。初めて聴く作品です。メシアン23歳の時に作曲され、3部から構成されています。ゆっくりしたテンポで弦楽器がユニゾンで旋律を奏でる第1部「十字架」は、弦楽器の音程が安定していました。洗練された音色に驚きましたし、メシアン独特の和音もある程度表現できていました。
第2部「罪」になると、テンポが速くなり激しい音楽に変わりました。空想的なイメージがあるメシアンにしては珍しく、シンフォニックな音楽でした。ホルンのベルアップもありました。演奏は、迫力満点でスコアの指示が明確に読みとれるほどよく整理されていました。欲を言えば、弦楽器にもう少しボリューム感を求めたいです。
第3部「聖体の秘蹟」は、第1部とほぼ同じ瞑想的な雰囲気に包まれ、彼方に消えるように終わりました。
この作品はまさにメシアンの知られざる名曲と言えます。
休憩後のプログラム3曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第10番。前半の2曲以上にすばらしい演奏を披露しました。とてもよく整えられたアンサンブルで、音程、音色、表情のつけ方などプロのオーケストラと比較しても聴き劣りがしない、遜色を感じさせない充実した合奏を聴かせました。特に弦楽器がすばらしく、なかでも第1ヴァイオリンのつややかで潤いのある音色は大したものです。本名徹次の要求に的確に応えられていた演奏でした。
第1楽章は、速めのテンポで始められましたが、115小節からの盛り上がりは強い意志表示が感じられました。また、展開部での強奏も指揮者の下に統率された演奏を聴かせました。ピッコロのトリルなど木管楽器を強めに出していたのが印象的。途中でコンサートマスターの弦が切れましたが、後ろの奏者の楽器を次々と受け渡して冷静に対応していました。
第2楽章は、スコア指示通りの速いテンポ。弦楽器と木管楽器がこのテンポで連符を手抜きせず正確に演奏できているのがまさに驚異的。演奏者全員が高い技術を有していることの証です。
第3楽章は、一転して繊細な表情を聴かせました。演奏に一体感があり、ロシア音楽に必要な濃厚な雰囲気も表現できていました。演奏全体で各個人が果たすべき役割を理解できていることがうかがえます。弦楽器による「D−S−C−H」のテーマも鮮やかに演奏。
第4楽章は、冒頭は遅めのテンポで丁寧に演奏。テンポが上がってからも弦楽器と木管楽器は連符を難なくクリアーしていました。
演奏終了後は盛大な拍手が送られました。学生指揮がステージに呼ばれ、拍手を受けていました。アンコールはありませんでした。プログラムに挟み込まれていたアンケートに賛辞を記入して帰宅。
京都大学交響楽団の演奏を聴いたのは今回が初めてでしたが、予想以上のすばらしい演奏で、カルチャーショックに近い深い感銘を受けました。技術的な至難を感じさせず芸術性を追求している姿勢はまさに学生オーケストラの常識を越えています。その辺のアマチュアオーケストラよりも数段レベルが高く、ほとんどプロのオーケストラと変わらない演奏を聴かせてくれました。強いて言えば、芥川也寸志の演奏は少しミスが目立ち、メインプロに比べると完成度がかなり落ちるのが惜しまれます。さらなる全体的なレベルアップに努めて欲しいです。創部以来、年2回の定期演奏会を開催(しかも2日公演)しているということで、これからは都合が許す限り聴きに行きたいと思います。
本名徹次は、2001年まで大阪シンフォニカー交響楽団の常任指揮者を務めていましたが、最近はベトナム国立交響楽団のミュージック・アドバイザーなど海外での活躍が多いようです。今回の演奏会でも、学生たちの素質を引き出した手腕は大きく評価したいと思います。
(2004.1.18記)