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交響曲第7番「レニングラード」 ロジェストヴェンスキー指揮/ソヴィエト国立文化省交響楽団 (1984年 モスクワ) 交響曲第9番 交響曲第10番 交響曲第13番「バビ・ヤール」 交響曲第14番「死者の歌」 組曲「ボルト」より第1曲「序曲」、第2曲「官僚の踊り」、第5曲「間奏曲」、第3曲「御者の踊り」
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GPR(Great Perforamance in Russia)から4枚組のショスタコーヴィチ交響曲選集がリリースされました。
収録作品、指揮者、演奏団体は上記の通りバラバラで、選集といってもまとまりはほとんどありません。
タワーレコードの広告(『レコード芸術』2002年9月)によると、すべて廃盤になっている音源らしいです。
一部に歴史的意義のある音源が含まれているのが魅力です。
交響曲第7番「レニングラード」は、ショスタコーヴィチの全15曲の交響曲の中で演奏時間が最長ですが、やはり少し長く感じます。緊張感を持続させるために部分的にカットしたいくらいです。また、戦時中に作曲されたせいか必要以上に強奏が多い気がします。
ロジェストヴェンスキー指揮/ソヴィエト国立文化省交響楽団による演奏は、標準よりやや上といった仕上がり。ロシアのオケらしく乾いた音色が特徴です。録音も作用して、少し直接的な演奏になっています。特にトゥッティでのサウンドが問題で、オーケストラ全体としての一体感があまり伝わってきません。ユニゾンで厚みに欠けるのも残念。また、打楽器群は少し張り切りすぎの印象。ホルンが弱いのが惜しい。
第1楽章は、「戦争の主題」が、内声を強く出すことで皮肉っぽく滑稽に聞こえるのがおもしろい。
第2楽章は、中間部の盛り上がりの扱いが中途半端。打楽器がテンポに乗り切れていないのが原因。
第4楽章は、早いパッセージで管弦ともに少し危なっかしい。ラストの盛り上がりも合奏力がいまひとつ。
交響曲第9番は、簡素な古典的要素を感じさせる作品。
D.オイストラフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団による演奏は、オケが技術的にいろいろ問題が多いため、評価できる演奏とは言えません。特に管楽器が速いテンポについていけないなど弱点が露呈しています。また、楽器間の旋律の受け渡しも不自然で、掛け合いもお粗末。レベル的にはアマチュアオーケストラ以下かもしれません。
弦楽器は管楽器とはくらべものにならないほどよく揃っていて音色も美しい。名ヴァイオリニストの面目躍如ですね。
また、金管や打楽器の豪快な鳴らし方はなかなかおもしろく聴けました。
やはり惜しまれるのは、技術的に問題点が多すぎて、ショスタコーヴィチと親交があったオイストラフならではの時代背景などを加味した音楽が聞き取れる状況にないことでしょう。
第1楽章は、ピッコロソロがかなり怪しい。また展開部で表情の変化に乏しいのが残念。
第3楽章は、金管が音を外すなど緊張感のある演奏になっていません。
第5楽章は、中間部の行進曲でのグリッサンドが強烈。ラストのアレグロは、疾走と言うよりは崩壊に近い状況です。
録音は、CDの表記はMONOとなっていますが、実際はステレオ録音です。
交響曲第10番は、ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団による演奏。
録音は、モノラルでしかもライヴなので、聴衆ノイズが少し多めでときどき気になります。楽器の音色が混濁気味なのが惜しまれます。また、マイク位置の関係なのか打楽器(特に小太鼓)の輪郭がぼやけるのが残念です。さらに金管が聞こえにくいため、強奏ではいくぶん迫力不足に感じました。
演奏は、計算されたバランスが鮮やかでよく整理されている印象を受けました。ただし、ライヴ録音ということもあり、強奏では演奏がやや粗雑に感じました。
第1楽章は、厚みのある弦楽アンサンブルがすばらしい。ただし、後半は間延びしてやや退屈に感じました。
第2楽章は、演奏時間が4分を切る猛スピード。まさに一気呵成という表現がぴったりです。この演奏を聴くと、他の演奏が物足りなく聞こえます。この第2楽章だけでも、このCDを購入する価値があると言ってもいいかも知れません。
第3楽章は、有名なD−S−C−Hのテーマが軽やかに現れるのが意外でした。
録音状態を考慮すれば、この録音がムラヴィンスキー同曲演奏のベストとは言い切れませんが、全曲を通して力強く演奏されており、ムラヴィンスキーの芸術表現を実感できる録音と言えるでしょう。
交響曲第13番「バビ・ヤール」は、第2次世界大戦で虐待を受けたユダヤ人がテーマになっています。編成は、バス独唱と男声合唱が加わります。形式的には交響曲というよりは、歌曲に近い内容です。各楽章に標題が付されていますが、あまり気にしないほうがいいでしょう。
コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー交響楽団他による演奏は、初演の2日後のライヴ録音らしいですが、合唱団の表記が異なっていため正確にはよく分かりません。
初演者の貫禄で、この作品の魅力を余すところなく表現しています。バス独唱のしっかりとした口調に断固とした力強さを感じます。男声合唱は重厚でときには威圧的にも感じます。この作品の重苦しい雰囲気とよく合致しています。オケも強奏では暴力的とも言える破壊的なパワーを炸裂させています。
第1楽章が聴きどころで、不気味な静寂との対比がすばらしい。
第2楽章は、よくわからない楽章ですが真面目に演奏しています。
演奏内容がすばらしいだけに、モノラル録音である点が惜しまれます。
交響曲第14番「死者の歌」は、11楽章から構成されていて、その名の通り、死に関わる11の詩を採用しています。交響曲というよりは、性格は組曲に近いと思われます。
オーケストラも、管楽器を排除し弦楽器と打楽器のみで編成されています。これにソプラノとバスの独唱が加わります。なお、独唱は交唱形式ですが、第11楽章「むすび」で初めて重唱となります。ショスタコーヴィチの個性的なオーケストレーションが全編を通して冴えわたっており、変化に富んだ楽想が聴けます。
ここに収録されているバルシャイ指揮/モスクワ室内管弦楽団他による演奏は、世界初演演奏会の歴史的なライヴ録音です。聴衆の張りつめた雰囲気が感じられ、演奏者もかなりの集中力で演奏しています。演奏技術も高く、作品に共感を持っている様子が分かります。
特に、第2楽章「マラゲニャ」と第3楽章「ローレライ」は、ものすごい勢いで弾ききっています。
また、トムトムをffで楽器に穴が開くのではないかと思うほど激しく叩かせているのも印象が残りました。
録音は、CDの表記はMONOとなっていますが、実際はステレオ録音。ライヴならではの聴衆ノイズはありますが、音質は良好です。
カップリングは、ショスタコーヴィチ初期の作品組曲「ボルト」からの抜粋。
ロジェストヴェンスキー指揮/チェコフィルハーモニー管弦楽団による演奏は、ライヴ録音と思えないほど、クールでドライな演奏。表情のつけ方が薄く表面的で、作品の魅力があまり表現できていないように感じます。技術的にも基礎不足。この時期のチェコフィルは、ショスタコーヴィチをあまり演奏していなかったのでしょうか。
(2003.5.5記)